コロナ対策が必要な時代だからこそ見直したい茶道の各服点について

こんにちは、
茶道具通販専門店ふげつ工房、代表の田中です^^

2020年に入って
世界中でパンデミックを引き起こした
新型コロナウイルスによる感染症によって、

私たちの生活は
大きな変容を迫られることになりました。

その影響は、
暮らしの隅々にまで及んでおり、

日本を代表する伝統の一つである
茶道の世界も例外ではありません。

茶道においても
ソーシャルディスタンスの意識が高まる中で、

改めて各服点(かくふくだて)と呼ばれる作法の
価値が見直されつつあるのです。

各服点とは?

各服点について詳しく見ていく前に、
まずは茶道の基本である薄茶と濃茶の違いについて
ご説明させてください^^

薄茶は、茶道を始めた場合に、
多くの人が最初に習うものであり、
その名の通り、薄茶の抹茶を点て楽しむための作法です。

流派によって
細かな作法は少しずつ異なりますが、

2グラム程度の抹茶に
90度以上に沸かしたお湯を
約70CCほど注ぎ

茶筅で抹茶とお湯をかき混ぜるのが一般的なやり方です。

この混ぜ方を専門用語で
「点(た)てる」といいますので、
一般常識として覚えておくと良いでしょう。

一方、薄茶に続いて習うことになるのが濃茶で、
こちらは読んで字のごとく、
濃茶の抹茶を淹れるものです。

薄茶の場合はシャカシャカと
泡立てるように混ぜるのに対し、

濃茶の場合は、泡立たないように
撫でまわすようにして混ぜなければなりません。

この場合の混ぜ方を「練(ね)る」
と呼びますので、

前述した、
「点てる」と区別できるよう、
その違いを理解しておきましょう。

薄茶と濃茶の違いは、
抹茶と淹れ方だけでなく
飲み方についても存在します。

すなわち、薄茶の場合には、
一人ずつ異なる茶碗を使ってお茶を飲むのが通常であり、
これに対し、濃茶の場合には、
通常3人で、一碗の濃茶を飲みます。

各服点(かくふくだて)とは何か?

このように濃茶においては、
通常3人で、一碗を回し飲むのが一般的なのですが、
この慣習に一石を投じたのが各服点(かくふくだて)と呼ばれるお点前です。

各服点では、濃茶をお客様一人ひとり
異なる茶碗に練ってふるまうこととされており、
通常の一碗を3人で飲むことはしません。

このお点前は、明治期から大正期にかけて活躍した、
裏千家第13代家元である圓能斎鉄中(えんのうさいてっちゅう)宗室
が20世紀前半に考案したものであるとされています。

各服点が考案された当時は、日本だけでなく、
世界中でスペイン風邪と呼ばれる新型のインフルエンザが猛威を振るっていました。

一説には国内だけでも2,000万人以上が感染し、
40万人近くの死者を出したと言われる
この疾病の感染拡大を抑えるために、

極力参加者同士が接触しないための
お点前のやり方として各服点が考え出されたのです。

その後まもなくしてスペイン風邪は収束に向かい、
各服点をすることもなくなりました。
しかし、その点前は濃茶の各服立として存続しています。

各服点の作法とは?

では、ここからは裏千家における
各服点の通常の流れについて
お客様5名の場合を例にとって見ていきましょう。

まず、1椀目の濃茶を正客に出すところまでは、
普通の濃茶の点前の場合と同様です。

違いが出てくるのはここからで、
正客が茶碗を取りこんだところで、
正客・連客が総礼を行い

続いて正客が一口飲んだところで、
亭主が「お服加減は」と尋ね、
正客が「大変結構でございます」などと返します。

その後、亭主は水屋に戻って、
残る4名分の濃茶が入った茶碗を、
お盆に載せて点前座(定座)へ持ち出し、

直ちに右向こう→左向こう→左前→右前の順にお湯を注ぎ(一杓のお湯を半分づつ)手早く練ります。

そこで順にお湯を加えて練られた茶碗は、
長盆に乗せたまま次客が取りに行き、
次客・3客・4客・末客とお盆ごと回し茶碗をとります。

茶碗を取り込み次第、茶碗をおしいただき(感謝)、手前に2度回していただきます。

正客は、次客の一口で、通常通り亭主と問答を行います。

濃茶を飲み終わりましたら、
次客他連客は茶碗を順に末客までおくり、
末客(詰)は長盆に出された通りの順に載せていき、茶道口まで持って行きます

詳しくは、裏千家HP動画でご確認くださいね。
風興集にも書かれてありますので、読んでください。

続いて、
正客から主茶碗拝見を行うことになるのですが、

その後は、濃茶手前と同様の手順に戻ります。

なお、各服点においても
問答が行われるのですが、

そこでのやり取りは
基本的に通常の茶道の場合と何ら異なりません。

自分なりのオリジナリティを発揮する必要はなく、
定型通りの問答を行うだけで十分ですので、
使いやすいパターンをいくつか頭に入れておくと良いでしょう。

なぜ各服点が改めて注目されているのか?

この各服点は、新型コロナウイルスが猛威を振るう社会において改めて注目を集めています。

というのも、
新型コロナウイルスの主な感染経路は、
接触感染や飛沫感染であると考えられているため、

通常の一碗を3人で回し飲みを行った場合に、
ウイルスの感染を引き起こす可能性が極めて高いからです。

この点、各服点であれば、
一人ずつ別々の茶碗を使用するため、
せき込んだりしない限りは
他の参加者と接触したり、飛沫にさらされるようなケースはあまりありません。

感染経路を遮断できるため、
各服点であれば、
ウイルスに感染するリスクを避けつつ、
茶道を楽しむことが可能になるのです。

より感染リスクを減らすためにできること

各服点がいくら感染リスクの低減に適した方法であるといっても、
それだけで新型コロナウイルスに感染する可能性を完全にゼロにできるとは限りません。

このウイルスは非常に感染力が強く、
飛沫でも感染するため、

たとえ同じ茶碗を使いまわすのをやめても、
亭主と客との問答時などに
相手の飛沫を浴びて
感染が拡大してしまうおそれがあるのです。

そこで、極力リスクを排除するために、
通常時であればあまりおすすめできませんが、
お茶を口にする場合を除いて
マスクやフェイスガードを着用するというのも一案です。

飛沫感染予防防止パーテーションをご利用ください
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コロナ禍の中でも茶道を楽しもう

新型コロナウイルスによって引き起こされる感染症は、
予定されていた格式高いお茶会が延期になるなど茶道にも大きな影響を与えています。

しかしながら、そのような状況においても
各服点であれば感染リスクを抑えてお茶を楽しむことは可能ですので、
これまであまり各服点を行ったことがないという方は、
この機に改めてその作法を学んでみるとよいでしょう。