茶の湯で使われる菓子切り~正しい使い方と茶席でのマナー~

こんにちは、
茶道具通販専門店ふげつ工房、代表の田中です^^

これから茶道を習い始めよう
という人が、

初心者用のセットを購入すると、
道具を清める(拭く)などするときに用いられる
帛紗(ふくさ)と共に必ず入っているのが懐紙と菓子切りです。

菓子切は文字通り、菓子を切って口に運ぶためのもので、
茶道には欠かせない道具です。

菓子切りは、
ケーキにおけるフォークのようなものですが、

茶の湯の席ではどのように扱われているのでしょうか。

茶の湯における菓子切りとは?

菓子切りは、
出された和菓子をいただくためのものですが、
本来すべて木でできていました。

「クロモジ」という
クスノキの一種で作られていたことから、
茶の湯においては、「黒文字(くろもじ)」と呼ばれることも多いです。

しかし、時代が進むに連れて、
木製のものに加えて、
竹に漆を塗ったものや、ステンレス、
またプラスチックを材料として使っているものもでてきています。

おしゃれな装飾が施されたものや、
口当たりの優しいものは、
特に女性に好まれ、
単なる茶道の道具という概念を超えて、
日常でも愛用している人もいます。

茶の湯の席での菓子切りの正しい使い方は?

お茶の席では、
器に出された和菓子は、
懐紙にとっていただきます。

ほとんどの和菓子は、
2、3口で食べきれる大きさに作られています。

必ず菓子切りで一口大に切り分けて、
小さくしたものを口元へと運ぶことが大切です。

例えば、3口で食べきれるサイズならば、
まず、3分の1ほどの大きさに切ります。

左手で菓子をのせた懐紙を支え、
菓子切りでしっかりと下まで切ります。

そして小さい方をまずいただきます。

次に、残りの大きい方を半分に切り、
順に菓子切りで刺して口元へと運びます。

決して出された生菓子に、
菓子切りをそのまま突き刺して、
かぶりつくように食べてはいけません。

お菓子がどうしても食べきれないときは?

抹茶は、菓子を食べきった後で出されるのが通常です。

先に菓子をいただくことで、
口の中にほのかな甘みを残し、
そのあとの抹茶をよりおいしくいただくことができるからです。

また、
濃い抹茶をいきなり身体に入れると、
胃に負担がかかるため、

それを和らげる効果もあるとされています。

ただし、どうしてもその場で菓子が食べきれない
ということがあるかもしれません。

その場合は、途中まで手を付けた菓子を懐紙に包み、
人目に触れないようにそっと持ち帰りましょう。

菓子が残っている状態では、
招いた亭主が抹茶を出すことができない
とされていますので、いただく側の配慮が必要です。

使用した菓子切りも懐紙に包んで持ち帰ります。

日常における菓子切りの使い方

茶道において欠かせない菓子切りですが、
そのデザイン性の高さや凛とした存在感から、
茶の湯の席以外でも、愛用している人もいます。

例えば、お客様を自宅に招いたときに、
通常なら小さめのフォークや
爪楊枝のようなものを出すような場面でも、
おしゃれな菓子切りを添えるだけで、
一気に特別感が増します。

何でもないフルーツの盛り合わせや、
ちょっとしたお団子やわらび餅であっても、
菓子切りと共に出すことによって、
何か事前に準備をしておいてくれたのではないか
という気配を感じてもらうことができるでしょう。

その家の人の、生活に対する丁寧な姿勢や、
招かれた人へのおもてなしの心が、
たった一本の菓子切りからも垣間見えるものです。

自分の好みの菓子切りを見つける

茶の湯を楽しみ、
また日常生活でも和菓子を意識するようになってくると、
菓子切りにもこだわりたくなってくるかもしれません。

木製しか選択肢がなかった昔と比べて、
今はとにかく菓子切りの種類もバラエティに富んでいます。

ちょっとした専門店を覘けば、
これも菓子切りなのかと驚くような美しいものが並んでいて、
いくつも欲しくなってしまうこともあるでしょう。

茶道に親しむにつれ、
道具に対する好奇心や興味が増していくのはとても良いことです。

茶席に招かれた際、
出された菓子に菓子切りがついてくることもよくあるので、

わざわざ自分で持っていく必要はない
という意見の人もいます。

しかし、人から借りたものではなく、
自分専用の道具を持つことによって、
より茶の湯の世界の奥深さを味わうことができます。

ひと口に菓子切りと言っても、
実際使ってみると、

手に持った感触や唇に当てた感じが、
千差万別で、二つとして同じものがないことが感じられるでしょう。

また使った道具は、
常に清潔に保つ必要があり、
そのひと手間もまた、
自分自身を茶の湯という文化にさらに浸らせてくれることになるでしょう。

茶の湯における菓子と菓子切り

茶の湯における菓子は、
抹茶をより美味しくいただくためにあります。

しかしそれは、
ただ味覚を増すためだけのものではなく、
その見た目や込められた思いも含めて味わうものです。

掌に乗るほど小さなお菓子の中にも、
四季折々の自然の美しさを感じさせるこだわりがあります。

菓子切りも、単に食べ物を口に運ぶ道具ではなく、
茶道という文化を構成する大切な要素なのです。